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第三話 決定的現場を目撃

ผู้เขียน: 柳アトム
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-07-04 04:29:22

 翌日、私はレディースクリニックを訪れ、診察を受けていた。

 離婚と彩寧の登場という二つの衝撃的な出来事で一睡もできず、心なしかお腹に痛みがあるように思えたからだ。

 私は親友で、担当医でもある幸恵に連絡をした。

 幸恵は、今日はクリニックの勤務が休みだったが、すぐに駆けつけてくれた。

 そして私のお腹にエコーを当てて、子供たちの様子を確認してくれた。

「大丈夫よ。二人ともなんともないわ。でもね、妊娠初期の妊婦にストレスと不眠は大敵よ。充希はもともと妊娠が難しい体質だから、もし流産なんてしたら大変よ。もう二度と子供ができなくなる可能性だってあるんだから、くれぐれも注意してね」

 検査を終えた私と幸恵はクリニックの近くにあるカフェテリアに入った。

「それで、その後、宗司とは何も話をしてないのね?」

 幸恵の追及に私はコクンと頷く。

「それっきり宗司さんは部屋に籠ってしまって……。今朝も早くから会社に行ってしまったわ。……私とは一言も喋らず……」

 私がギュッとドリンクのカップを握って悲しむと、幸恵は「おのれ、宗司め~っ!」と怒りを露わにした。

 そして「充希を悲しませるなんて絶対に許せない! 今すぐその性根を叩き直してやる!」と息巻いた。

 幸恵は、宗司に対して態度が厳しいが、それには理由があった。

 実は私と幸恵、そして宗司の三人は同じ中高一貫校の同級生だったのだ。

 しかも幸恵と宗司は同じ剣道部で、幸恵が部長、そして宗司が副部長で、二人は旧知の間柄だったのだ。

 私は今にも飛び出しそうな幸恵の手をとって、まずは落ち着いてもらおうとなだめた。

 幸恵は私に手を握られると、深いため息をつきつつ、私の手を握り返してくれた。

「そうね。私の方が興奮しちゃ駄目ね。一旦、落ち着くわ」

 私は幸恵が落ち着いてくれて安心した。

「それで? どうするの?」

 落ち着いた幸恵は私を心配して尋ねてくれた。

 私は色々悩んだが、やはり宗司と話をしないことにはどうにもならないと考え、その旨を幸恵に伝えた。

 その考えに、幸恵は賛同してくれた。

「そうね。一人で悩んでいたってしょうがないものね。

 わかったわ。幸いお腹の子供たちは大丈夫だから、途中で転んだりしないよう気を付けるなら、宗司の会社に行くことを許可してあげるわ」

 幸恵は私の担当医っぽく、意図的に偉そうな言い方で冗談めかし、私を後押ししてくれた。

 幸恵は「私も一緒に行こうか?」と提案してくれたが、私は断った。

 これは私たち夫婦の問題。

 自分たちで解決しないといけない。

 その為、私は一人で夫の会社に向かった。

 * * *

 電車を乗り継ぎ、私は宗司の会社に初めてやって来た。

 これまで、宗司の会社を訪れる機会はなく、今回が最初の訪問だった。

 見上げる程の高層ビルは、私の実家が経営する大和田グループのビルに勝るとも劣らない立派な社屋だった。

 私は宗司が担う責務の大きさを改めて実感した。

 このビルにいる社員や業務など、ヒト・モノ・カネの全てに宗司は責任を持つのだ。

 その重責の重さは計り知れない。

 そう考えると、杵島グループの社屋の大きさに、私は怖ささえ覚えたが、意を決して入り口の自動ドアをくぐった。

「確か社長室はビルの最上階だと宗司は言っていたはず……」

 私は微かな記憶を頼りにエレベーターホールに向かう。

 そして各階案内を見てみると、確かに最上階に社長室という記載があった。

 ここに宗司がいる。

 私は迷子が親を見つけたような安堵感を覚え、エレベーターの呼び出しボタンを押そうと手を伸ばしたが、そうした矢先、私は受付の女性に呼び止められた。

「あの、お客様。失礼ですが、当ビルは社員でない方のご入館はお断りをしておりまして……」

「弊社社員とお約束でしょうか? もしそうでしたらこちらでお名前とご用件をお願い致します」

 私は受付に促された。

「私は杵島 充希です。約束はしていませんが、社長に会いたくて……。通していただいても宜しいですか?」

 私がそう申し出ると、受付にいた二人の女性は怪訝そうに顔を見合わせた。

「杵島社長にお会いになりたいのですか?」

「失礼ですが、社長はご多忙で、お会いになるにはご予約が必要なのですが……」

 私は明らかに懐疑的な目で見られ、慌てて弁明をした。

「私は杵島 宗司の妻です。夫に話があって来たんです。直接、会って話がしたいのです」

 私はそう訴えたが、受付の女性二人はますます困り顔になった。

「社長の奥様ですか……。あの、失礼ですが、もし宜しければ身分証明書か何かを見せていただけないでしょうか?」

 私は自分が不審者だと疑われている事に気づき、慌てて身分証を証明できるものがないかバッグの中を確認した。

「社長の奥様でしたらスマホで直接社長にご連絡をされた方が良いかもしれませんが……」

 そう言われたが、実は私は宗司の電話番号も、SNSなどの連絡ツールも何も知らされていなかった。

 私は過去に、宗司に「もしもの時の為に、電話番号くらいは教えて欲しい」と申し出たが、偽装結婚なのでそんなものは必要ないと断られていたのだ。

 私は、宗司に直接連絡できない理由を「私たちは夫婦ですが偽装結婚なので連絡先を交換していないんです」とは言えず、苦し紛れに「スマホをなくしてしまって……」と嘘をついた。

 受付の女性は一応は納得してくれたが、私のことを不審に思う気持ちは払拭されなかったようだった。

「ねえ、社長の奥様って、確か……」

「ええ。最近、総務に新しく入った女性が、実は社長婦人じゃないかって噂されているわよね……」

「そうよね。私も社長とその女性が一緒にいる姿を見たけど、とっても仲が良さそうだったわよ」

「それじゃあ、この女性は一体……? まさか社長夫人を語る偽者……?」

 受付の女性二人は顔を寄せ合って小声でヒソヒソと話したが、折悪しく、私は二人の会話の内容が聞こえてしまった。

 私は今、自分がかなり不審に思われていることを痛感した。

 そして、それもさることながら、自分以外の誰かが宗司の妻だと噂されていることに驚いた。

 どうしてそんなことが……!?

 私は動揺し、ますます探し物が見つからなくなってしまった。

 気持ちが焦り、乱暴にバッグの中を掻き回したが、その落ち着きのない様子が、ますます受付の女性二人の懐疑心を刺激してしまった。

 私は寝不足というコンディションもあって、気が動転しそうになったが、その時、「あの……。どうかしましたか?」と、声を掛けられた。

 私が振り向くと、そこには一人の男性が立っていた。

「私は杵島社長の秘書の者です。失礼ですが、あなたは杵島社長の奥様ではありませんか?」

 私は突然そう言われ、驚くと同時に、自分のことをわかってくれる人物が現れたことに喜んだ。

 しかし同時に、どうしてこの秘書の方は、私が宗司の妻だとわかったのか不思議にも思った。

 * * *

「やはりそうでしたか」

 私が宗司の妻であると伝えると、秘書の男性は笑顔になった。

「どうして奥様のことを存じ上げているのかというと、社長はご自分のデスクに奥様の写真を飾られていて、私はその写真を拝見したことがあったからです。

 さらに社長は奥様の写真のことに触れられると、写真を見せながら奥様自慢をされるんですよ。ですので奥様のことはよく存じております。何やら料理がお得意で、オーブン料理がとても美味しいらしいですね」

 それを聞いて私は喜んだ。

 宗司は私の写真をデスクに飾り、仕事をしてくれていたのだ。

 仕事が忙しく、家にもなかなか帰れず、偽装結婚ということもあって、会社では私の事など気にもかけてくれていないと思っていたが、宗司は私のことをいつも身近に留めておいてくれていたのだ。

 奥様自慢は少し恥ずかしかったが、私は身体の芯に小さな明かりが灯ったように温かみを感じた。

 そして急速に自信が湧いてきた。

 話し合えば大丈夫。昨晩は離婚届を突き付けられて動揺したけど、今ならちゃんと宗司と話し合える。

 そしてそうすれば宗司も離婚届のことは何かの間違いだったと言ってくれる。

 * * *

 秘書の男性は、受付の女性に内線で社長を呼ぶよう指示をしてくれた。

 私は、ほっと胸を撫で下ろした。

 危うく不審者と思われ、取り合ってもらえない所だったが、容疑は晴れ、これで宗司にも会うことができそうだ。

 しかし、内線で宗司を呼び出してくれていた受付の女性は、しばらくして眉を寄せると、申し訳なさそうに私に結果を伝えてきた。

「奥様、申し訳ありません。社長は今、席を外しておりまして……。どうやら昼食に出られているようなんです」

 それを聞いて私は時計を確認する。

 確かに今はちょうど昼休みの時間だった。

 すると秘書の男性が「きっと社長はすぐに戻られますよ。お掛けになってお待ちになってはいかがですか?」と私に来客用のソファを勧めてくれた。

 私は「そうさせてもらいます」と言って、ソファに腰掛けた。

 程なくして私は温かいお茶を出してもらったが、そのお茶を一口いただいた時、私は先ほど、受付の女性二人が話していた噂話のことが気になった。

 総務に新しく入った女性が社長の奥さんではないかと噂されている件だ。

 私はあることをすぐに思い出す。

 それは宗司が「彩寧が戻った」と言った言葉だ。

 これが「最近、総務に入った女性」と合わさり、私はすぐに彩寧が宗司の妻だと勘違いされていることを推察した。

 私は言い知れぬ不安と胸騒ぎ、そして不快感を覚え、心が千々に引き裂かれた。

 まさかよりにもよって彩寧が宗司の妻と勘違いされるなんて……。

 私は胃がキュッと固くなり、吐き気にも似た悪寒が込み上げる不快感に襲われた。

 そんな嫌な気持ちを和らげようと、私は温かいお茶をもう一口いただく。

 温かいお茶が喉を通ることで、私はほっとした気持ちになり、どうにか落ち着きを取り戻すことができた。

 するとその時───。

 私は宗司が帰ってくる姿を見つけた。

 私は喜びでパッと笑顔になる。

 しかし、次の瞬間、異変に気付いて表情が急速に強張った。

 宗司は一人ではなかった。

 宗司は女性と一緒だった。

 そしてその女性は宗司の腕に抱きついていて、二人は談笑しながら会社に戻って来ていた。

 その女性は彩寧だった。

 私は自分の足元の床が崩れたかのような落下感を覚えた。

 彩寧は宗司の妻だと会社で噂されている。

 その事と相まって私は激しい眩暈に襲われた。

 そして楽しそうに談笑しながら歩く二人の姿を、私はただ黙って見ている事しかできなかった。

 宗司は私に気付かず、そのまま彩寧と二人でエレベーターに乗り込んでいった。

 * * *

 その後、私はどこをどう歩いて自宅に帰ったのか……。

 それさえも覚えていない程、私はショックを受けていた。

 そして自宅に戻ると、昨日、宗司に突き付けられた離婚届を取り出し、妻の欄に自分の名前をサインすると、そのまま身一つで家を飛び出した。

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